今回から、韓国映画についてみていきたいと思います。
今年は、「KCIA~南山の部長たち~」という映画がヒットしましたが、舞台となったのが朴正煕大統領時代です。
そこで見ると、大統領の巨大権力というものが見えてきます。同じ権力でも日本は、首相です。
【画像:官僚だから知っている菅総理の「サイン、顔色、理屈」 | Forbes JAPAN】
【画像:朴正煕 – Wikipedia】
しかし、権力としてはやはり、大統領のほうが大きいです。
で、日本は、選挙が始まります。この選挙シーズンにおいて大統領と首相の違いを映画を見て考えたいと思います。
まずは、韓国映画のシュリを見ていきたいと思います。
シュリ①
今なお準戦時体制である韓国と北朝鮮を描く韓国映画『シュリ』。今見ても引き込まれるほど面白い。
韓国では1999年2月13日に、日本では1999年秋の東京国際映画祭にて主演のハン・ソッキュの舞台挨拶つきで渋谷公会堂で上映されたのち、2000年1月22日に公開された。
シュリ②
公開された時代としては、金大中大統領時代。その頃、国策として、車一台売るのではなく映画や音楽の販売流通を促進しようとする動きがあった。
【画像:シュリ : 作品情報 – 映画.com】
その時代の初めに公開されたのが『シュリ』である。韓国国内で観客動員数621万人(うちソウル244万人)、日本で18億円の興行収入となった。
シュリ③
韓国の情報機関と北朝鮮工作員との激しい攻防を描いたアクション映画。ハードボイルドな作風ながらラブロマンスありサスペンスありの極上の作品だ。
【画像:シュリ : 作品情報 – 映画.com】
韓国がいかにレベルの高い作品を作っていたのかを知れる名作である。
シュリ④
「シュリ」とは、北朝鮮と韓国の間にある綺麗な川に住む魚を意味している。南と北を行ったり来たりする北朝鮮の工作員を意味し、暗号として用いられていた。
【画像:シュリ(ヤガタムギツク)韓国固有種 入荷! | 日本産淡水魚・大型肉食なまづや新着情報ブログ】
【画像:ニキータ – 作品 – Yahoo!映画】
【画像:おすすめのフランス映画 第17弾 – Jardin francais】
本作の参考となった映画がある。リュック・ベッソン監督の『ニキータ』だ。その中に登場する女工作員を意識して作られているといえる。
シュリ⑤
重要人物として、主人公であり韓国情報機関の特殊要因ハン・ソッキュ(役名ユ・ジュンウォン)、
【画像:韓国映画「シュリ」のあらすじ、キャスト、最新ニュース|wowKorea】
恋人役で北朝鮮工作員であるキム・ユンジン(役名イ・ミョンホン)、北朝鮮の第八特殊軍団隊長を演じるチェ・ミンシク、主人公の相棒ソン・ガンホ(役名イ・ジャンギル)が登場する。
シュリ⑥
北朝鮮の原野から物語は始まる。そこに佇む軍服の男性。緊迫感あるBGMとともに鋭いナイフで人が刺され、互いに向き合い敬礼する。
【画像:Shiri】
訓練の一場面なのだ。ランニングなどのごく普通な訓練から、人を殺める訓練までもが行われる。躊躇う者は、その場で自分が殺される。これが特殊工作員の訓練だ。
シュリ⑦
二人一組で対峙し、先に銃を組み立てた方が相手を殺める、囚人集団を相手に格闘し命がけで戦うなど、訓練シーンはかなりハードだ。
【画像:Shiri】
特殊部隊は存在が秘密であることから、脱落した者も同じく殺される。本当の死と向い合わせの状況下で、いかに冷静沈着に対応できるかが訓練されるのだ。
シュリ⑧
動くバスの中に置かれた人形の頸椎を撃ち抜く、人の首と首の間に置かれたビール瓶を銃で撃ち抜くなど、ハードな訓練シーンが続く。
【画像:Shiri】
撃ち抜かれる隊員もまた、死と隣り合わせの状況ながら、いかに感情を出さず微動だにせずいられるかが試される。冒頭で過程を卒業する女性工作員が描かれる。
シュリ⑨
韓国では、ガス爆発を引き起こしや重要人物を暗殺する女性工作員イ・バンヒを追って、
【画像:『シュリ』日本版劇場予告編】
韓国秘密情報機関OPの特殊要員ユ・ジュンウォンと相棒のイ・ジャンギルは、最近相次ぐ要人暗殺事件の捜査秘密情報機関が調査に奔走する。同時に流れるは主人公ユ・ジュンウォンのプライベートシーンだ。
シュリ⑩
殺伐とした捜査シーンと並行して、プライベートシーンすなわち結婚をも思わせるラブロマンスが描かれる。
【画像:『シュリ』日本版劇場予告編】
一方、捜査ではその先々でキーマンが暗殺される。そこに武器の密輸を自供する男から連絡がかかってくる。「北朝鮮の工作員に命を狙われているため、身柄を確保してほしい」というもの。
シュリ⑪
話を聞くと、北朝鮮工作員は、韓国が秘密裏に開発している、国防科学技術研究所の開発した新素材であり、驚異的な破壊力を持つ液体爆薬CTXを奪取しようと画策していることがわかる。
【画像:太虎 på Twitter: “映画「シュリ」。北朝鮮第八特殊部隊長役のチェ・ミンシク】
【画像:韓国映画ブームの原点 『シュリ』 : 韓国なんでもブログ】
主人公らが研究所を訪ねても、国家機密であることから、その製造や保管については知ることができない。
シュリ⑫
事件には、女性北朝鮮工作員イ・バンヒが関与していることが見えてきたが、中々足取りが掴めずにいた。
【画像:シュリ – 写真 – 映画情報 – クランクイン!】
一方で事件のキーマンが次々と暗殺されていくことから、内部情報漏洩の可能性もあると、疑心暗鬼になる主人公ら。捜査を進めると、なんと金魚型の盗聴器が仕掛けられていたことがわかった。
シュリ⑬
金魚型の盗聴器はどこから入ってきたのか。それは、ユ・ジュンウォンの恋人経由で入ってきた金魚であることがわかった。
【画像:『シュリ』日本版劇場予告編】
相棒イ・ジャンギルがそこに乗り込むと、そこには北朝鮮第八特殊軍団隊長のチェ・ミンシク。激しい銃撃戦の後、イ・ジャンギルは命を落とす。
シュリ⑭
銃殺された相棒イ・ジャンギルの手には、朝鮮南北合同チームのサッカーのチケットが握りしめられていた。
それは、試合開催時に当時の北朝鮮のトップ・金正日書記長が来国することを意味していた。この競技場を爆破することが、北朝鮮第八特殊軍団の目的だったのだ。
シュリ⑮
なぜ、北朝鮮のお膝元である第八特殊軍団がトップの命を狙うのか。その時、チェ・ミンシクから韓国側へ連絡が入る。
【画像:韓国映画ブームの原点 『シュリ』 : 韓国なんでもブログ】
「ソウルに爆弾を仕掛けた。爆破時間まで30分」と。続けて言う。「今、自分の前には嘔吐する男性がいる。いい気なものだ。同じ朝鮮でも、北の方では食べる物もないのに」。
シュリ⑯
「南の方では、酔っぱらって嘔吐しているなんて…」、北朝鮮第八特殊軍団隊長チェ・ミンシクの皮肉だった。
北朝鮮の生活環境は最悪だった。このままでは同胞たちは飢え死にする。今まで書記長の命令に従っていたが、このままではだめだと書記長直属の部隊でありながら暗殺を企てたのだった。
シュリ⑰
チェ・ミンシクは言う。「書記長暗殺を機に、北朝鮮は韓国に戦争をしかける。
【画像:映画 シュリ(1999) 抜群に面白い韓国製アクション映画 – ザ・競馬予想(儲かるかも?)】
そして南北統一を図るのだ」と。これから起こす爆破を韓国が企てたかのように見せることが目的だったのだ。主人公ユ・ジュンウォンはそれを防ぐべく攻防戦に出る。チェ・ミンシクとの格闘シーンは圧巻だ。
シュリ⑱
チェ・ミンシクは続ける。「いい気なものだ。韓国が試合を見て南北統一だと浮かれている間、北朝鮮はどうだ。
若い女は家族の飢えをしのぐため体を売る。農民は草や木の皮まで食べている。親兄弟が死んだらその肉すらも食う。同じ朝鮮なのにここではサッカーか。北はそんなところじゃないんだ」
シュリ⑲
「だから俺たちは命懸けでやるんだ。ハンバーガーを食ってるお前たちに俺たちの気持ちがわかるわけないんだ」。
【画像:s.korea vs n.korea (1998 movie) Swiri】
チェ・ミンシクの演技は、世良公則を思わせる名演技。その独特の目力と迫力は、クセのある役を演じると一品ものだ。格闘の末、間一髪のところで、主人公は爆破を食い止める。
シュリ⑳
死に際、チェ・ミンシクは言う「俺が死んで終わると思うなよ」と。女工作員が捕まっていないことに気づく主人公ユ・ジュンウォン。狙撃による暗殺を防ぐべく、トップの元へと急ぐ。
【画像:映画シュリのあらすじ・キャストと感想まとめ!アクションシーンがすごい?】
【画像:Shiri】
そこだ対峙する主人公と女工作員イ・バンヒ。彼女は、結婚を目前に控えていた恋人・ミョンヒョンだった。
シュリ㉑
ジュンウォンの恋人であるミョンヒョンは、実は自分が追っている犯人、北朝鮮スパイのイ・バンヒだった。ジュンウォンは驚愕の真実に絶望した。
【画像:『シュリ』日本版劇場予告編】
【画像:Shiri】
自分に見せていた彼女の笑顔も、愛の囁きも思い出も、全て嘘だったのかと。彼女の何を信じればいいのか。自分は彼女を前にどうすればいいのかと。
シュリ㉒
イ・バンヒが騙っていたミョンヒョンという偽名は、実は彼女の妹の名前だった。イ・バンヒは整形をして妹ミョンヒョンそっくりに化けていたことから、長きにわたり潜伏生活を続けることができた。
【画像:シュリ】
そしてイ・バンヒもまた、自身に課せられた使命とジュンウォンへの愛の狭間で葛藤していたのだった。
シュリ㉓
イ・バンヒの使命は祖国復活であった。韓国では豊かに人々が暮らすことができる一方、北朝鮮では今日食べるものにさえありつけず、飢え死にしている現状。
【画像:『シュリ』日本版劇場予告編】
それを変えようとしない国のトップ。これを打破するために導き出した答えは、両国のトップを殺害し戦争を経て南北を統一することだった。
シュリ㉔
次に出会った時は敵同士、殺し合う運命。わかっている。それが自身に課せられた使命。しかし、相手のことを心から愛している。
【画像:쉬리 (S_wiri)】
どうすればいい。自分にとっての正しい答えはなんなのか。ジュンウォンも、イ・バンヒもそれぞれが同じ思いを抱きつつ答えを出せないまま、二人は遂に運命の邂逅を果たす。
シュリ㉕
イ・バンヒは、爆弾が不発だった時のため、狙撃による暗殺も企てていたのであった。しかしそれもまた失敗に終わる。
【画像:쉬리 (S_wiri)】
すかさず逃げる両国のトップ。逃しはしない。祖国復活、それこそが自分の生きる意味。彼女は腹を決めていた。しかし、そんな彼女の前にジュンウォンは現れた。
シュリ㉖
ジュンウォンは同僚に言われていた。「嫁さんに自分の仕事のことを言わないのか。もし何かあったらどうするんだ」と。ジュンウォンは答える。
【画像:쉬리 (S_wiri)】
「嫁には言わない。任務を優先する」と。本来なら即座に敵を殺めるジュンウォン。彼女を前に、銃を持つ手を震わせていた。
シュリ㉗
二人は銃を互いに向け、睨み合っていた。使命を帯びた眼光は、何かを訴えているようだった。
【画像:쉬리 (S_wiri)】
一瞬で全てが決まる。国の運命も、愛も、二人の未来も。イ・バンヒは、視線をそらし両国のトップに向け銃口をかざした。それは、ジュンウォンが自分を撃ちやすくするための動作であった。
シュリ㉘
ジュンウォンは間隙を突くようにして彼女の頭を撃ち抜いた。崩れ落ちる彼女。その眼は彼を見つめていた。全てが終わったのだった。
【画像:南北分断映画「シュリ」、「JSA」 | kazumiのミーハーワールド!】
その後、ジュンウォンは査問委員会にかけられる。「あなたほどの人間が、彼女がスパイだと気づかなかったのか」と。「知らなかった」と答えるジュンウォン。
シュリ㉙
取り調べのさなか、ジュンウォンはイ・バンヒが妊娠していたことを知る。動揺を隠せないジュンウォン。
【画像:シュリ】
イ・バンヒは子どもを理由に手を打つこともできたであろうに、それをしなかった。ふたりは互いに、任務であると冷徹に割り切って遂行することができなかった様子が伺える。
シュリ㉚
ジュンウォンは言う。「彼女はヒドラだ」と。ヒドラとは、ギリシャ神話に出てくる怪物。身体は一つであるのに、複数の頭を持つ。
【画像:シュリ】
「イ・バンヒは、一人でありながら北朝鮮と韓国の2つの顔を持ってしまった。この体制が彼女を化け物にしてしまったのだ」と。そして続ける「どっちも彼女だ」と。
シュリ㉛
ジュンウォンは、これが限界だと忠実にこなしてきた職を辞する。帰路につくと、留守電に彼女のメッセージが残っていた。
【画像:シュリ】
「偽りばかりの人生の中で、ジュンウォンと一緒に過ごした日々が自分の全て。本当の自分の姿だった」。ジュンウォンは、彼女と過ごした日々を反芻しながら海を眺めていた。
①日本映画の性質は、義理と人情。赤穂浪士がまさにその典型と言える。だが、『シュリ』は徹底的に感情に訴えかけてくる作品だった。
【画像:文化を楽しみ、継承すること | トラキチひとり語り】
【画像:쉬리 (S_wiri)】
【画像:ラスト15分で急に置いて行かれる展開に納得いかず-「ニキータ (1990仏)】
これが韓国の国民性であり、だからこそ韓国映画は面白い。とくに、銃を向け合うラストシーンは、映画『ニキータ』を意識しているのが読み取れる。
https://xn--u9jy52gltai77a119b6fc.com/2021/05/10/tamura-masakazu-musume/
②映画『ニキータ』では、暗殺を実行すべく風呂場にて銃を組み立てるシーンがあるが、映画『シュリ』においても、イ・バンヒがトイレで銃を組み立てるシーンがある。
【画像:映画に登場するプロップガン〜アサシン(暗殺者)が使用する得物は映画にどう描かれてきたか…】
【画像:まゆを。 a Twitter: “この hash tag見て、直感で浮かんだ作品】
この銃は、AUGシリーズと言い、オーストリア軍で1977年に正式採用された銃である。
③『ニキータ』、『シュリ』で登場する銃・AUGシリーズは、ほかにもオーストラリア、ニュージーランド、サウジアラビア、アメリカの沿岸警備隊、フランスの特殊部隊GIGNとまったく同じ銃を使ってることから、
【画像:映画に登場するプロップガン〜アサシン(暗殺者)が使用する得物は映画にどう描かれてきたか…】
【画像:まゆを。 a Twitter: “この hash tag見て、直感で浮かんだ作品】
『シュリ』は『ニキータ』をかなり意識しているといえるだろう。
④殺し屋が登場する映画としては『レオン』(1994年、米仏)も有名だ。「清掃人」と言われる非人間的な殺し屋に人間的な要素を含ませる作品で、これもまた涙なしに見ることはできない。日本では1995年公開。
【画像:レオン/ロリータ的脚本を名作に変えた3人の名優たち】
その際のキャッチコピーは「凶暴な純愛」。